2008年9月21日日曜日

人形の家

ながらく更新をさぼっておりましたが、仕事も一段落したので、よしなしごとを綴っていこうかと思っています。
今月観た芝居のなかでは、デヴィッド・ルヴォー演出の『人形の家』が突出していたと思います。
以前、私は、デヴィッド・ルヴォーについて、『傷ついた性 デヴィッド・ルヴォー演出の技法』(紀伊國屋書店)を上梓したことがあります。
「ブルールーム」「ナイン」以来、久々のデヴィッド・ルヴォー演出を観て、演出家の根幹にある技法は、変わらないものなのだかなと実感しました。
一言で言えば、西欧近代劇を上演する根本に、「言葉による決闘」を置いているということです。
今回は相当緻密な演出が行われ、ただ、個人の心情の吐露として、台詞があるのではなく、
相手を説得する、いや相手を屈服させるために、言葉はあるのだということが、明確に打ち出されていました。
その意味で、これまで何度もデヴィッド・ルヴォー演出を受けてきた堤真一や松浦佐知子にアドバンテージがあるのは、当然ですが、難役のノラを演じた宮沢りえが、女優として、ひとまわり大きくなったと感じました。
キャリアの適切な時期に、よい演出家の徹底した演出を受けると、こんな奇跡がおこるのですね。

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