坂東三津五郎さんから、一年にわたって聞書きをした「坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ」が、岩波書店より、刊行されました。
あとがきにも書いたことですが、三津五郎さんは、この本の成立に対して、とても積極的でした。聞書きの本で、入校前の原稿やゲラに対して、五度もていねいに目をとおすのは、異例のことだと思います。
根底にあるのは、自分を知ってほしいという気持ちではなく、歌舞伎をより深く知ってほしいというパブリックな意志でした。これが根底に流れているからこそ、単に役者の芸談が並んでいる本にはなりませんでした。
編者の私がいうのはへんかもしれませんが、三津五郎さんが自らの役者としての実体験を元にしながら、歌舞伎の魅力とはなにかを自問自答しているように思えました。
企画は、歌舞伎の中級者向けの本として出発し、そのことは頭から離れたことはありませんが、結果として、歌舞伎をみはじめてまもない方にも、あるいは、長年見続けてきた歌舞伎通の方にも、愉しんでいただける本になったのではないかと思います。
ご一読いただければうれしく存じます。
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